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山口連続殺人放火事件(周南市での5人殺害事件)について

周南市金峰(みたけ)の住民わずか14人の限界集落において、5人が殺害される凄惨な事件が発生しました。
この事件については、事件の背景や関係者の人物像を巡り、すでに様々な憶測・報道が飛び交っていますが、加害者が都会から田舎へ定住(Uターン)していたことが大きく取り上げられていることから、このブログでも取り上げてみようと思います。
(久しぶりの更新にもかかわらず「山口県見聞録」とあまり関係がなくて大変申し訳ありません。)



・都会で起こりうる犯罪との類似性

 この事件は、人里離れた辺鄙な村落で発生した猟奇的な大量殺人という共通点から、「平成の八つ墓村」と呼ばれることがあるようですが、「八つ墓村」という言葉には、呪われた異空間での精神的異常性というイメージもある点で、若干ミスリーディングでないかと考えます。報道事実を見ていると、田舎という異空間でしか起きない異常な犯罪というより、むしろ全国で日常的に起こっている家庭内犯罪・校内犯罪・職場内犯罪に共通する側面が多いと思われます。

 例えば一般的な家庭内犯罪の場合と比較してみます。家庭内では人と人との関係が密接であり、より複雑なコミュニケーションが双方向で必要となりますが、それが適切になされなければ、恨みの感情が積もりに積もって、凶悪事件につながることがあります。今回の事件でも、「限界集落」という、人と人とが密接にコミュニケーションをとらざるを得ない環境の中で、加害者・住民の感情がともにエスカレートし、最終的に凶悪事件につながってしまいました。
 都会では隣人との関係が比較的希薄なため、今回の事件のような形で隣人への凶悪事件に発展することは少ないですが、家庭内・学校内・職場内などで形を変えながら頻繁に発生している犯罪と言えます。

 もう一つ、校内犯罪と比較してみます。外部との接触が少ない、閉鎖的な集団では、第三者の批判的な目にさらされる機会が少ないために、問題が更に増幅される傾向にあります。校内いじめなどは、もともと学校という閉鎖的な環境に加えて、思春期ならではの家庭内コミュニケーションの難しさなどが関係して、極端な集団心理が形成されて発生してしまいます。
 今回の集落も、他の集落からの距離が遠く、住民も行動範囲の狭い高齢者であったために、事件へと加速してしまったと考えられます。


・発生を防止することは可能だったのか?

本件では、集落の中でのコミュニケーションがうまくいっていなかった(住民による加害者に対する村八分、酒の席での加害者への刃物による傷害事件)、外部に助けを求めようとした(加害者が警察へ相談していた事実、不気味な貼り紙)、信頼関係が完全に崩れていた(加害者宅への監視カメラの設置)など、事件へつながる重大なシグナルが複数あったと見られるにも関わらず、誰一人として、事件を回避するような具体的行動を取ることができなかったことが大変残念です。

当事者が全員高齢者であるために状況判断能力が弱っていたこと、警察も住民同士による自治を尊重せざるをえないこと、など仕方がない面もありますが、個人的な印象としてはやはり、ひょっとしたらどこかの段階で防ぐことができたのでは、という気がしてなりません。


・集団の中での適切なコミュニケーションの難しさ

地域社会・家庭・職場を問わず、自分を取り囲んでいる集団において、類似した状況が発生した場合、自分には何ができるのだろうかと考えてみました。多数側に回っていじめを黙認したり、更に加担してしまうかもしれません。孤立してひがんでいる人に向かって、自分が精神的に(更には物理的に)傷つけられるのを覚悟で、温かい手を差し伸べられる勇気があるかといえば、正直難しいです。
今回のケースのように都会からUターンしていたり、世代が違ったりして、価値観の相違がコミュニケーションの難しさにつながってしまうと、尚更問題を解決するのが難しくなります。




このように、霊的とも言える精神的異常性を彷彿とさせる「八つ墓村」と比較すると、この事件はきわめて現実的で、都会でも日常的に起こりうる問題を大きくはらんでいると思うのです。
加害者の猟奇性、田舎特有の閉鎖性、もしくは周辺住民の集団意識の異様性などにばかり焦点があたりがちですが、誰しも自分の身に起こりうる問題として、類似事件の発生防止のためにも努められれば、と思います。

コメント

上が責任をとらず、ひとつ下に任せる構造の問題

お久しぶりです。以前、山口の人々には「土地を変えることへの無力感」が実は強いのではないかと書いた覚えがありますが、村おこしをしようとした保見氏は、ある意味それを乗り越えようとして返り討ちにあったのでは、そんな感じもして、私には正直言って同情的に感じるところもあります。むろん、むろん事実は知れる由もなく報道から想像をもとにした限りですが。

誤解はあるかも知れませんが、村の雰囲気として五人組や隣組と似た感覚があったのかもしれません。件の村で事実そうであったかは別として、そういう村が在ったとした場合そういう雰囲気が作られやすいその根本の構造はどこに起因するのだろう、と考えてみました。

以下のような関係がひとつ大きいのではないでしょうか。

①「上のもの(とりわけ、法的に責任の決められた公共の組織:市役所や県庁)が責任をとろうとせず、ひとつ下(自治会長など)に任せる」。よく言えば、住民の自治・自由にまかせている、悪く言えば、何かあっても、具体的に指令を下したものとしての責任をかぶらずに、せいぜい住民の自治に任した責任をかぶる太っ腹な市役所・市長・県庁・知事、というふうに格好よく終えられるようにしている。

②一つ下(自治会長など)としては、市役所に任されているのだから責任を果たさねば、と思い生真面目になりすぎたり、悪く言えば怒られたくない・いい顔をしなければ、となって、住民の監視を厳しくしはじめる。

③住民としては、あの近隣である・親戚である・知り合いである自治会長の言うことだし、争うと今後住みにくくなるから、どんなことでも言うことを聞いておかねば、となる。市役所と言う、多少遠い組織なら上申もやりやすいが、それが出来にくい。本当は市役所に言いたいことなのに、自治会長を通さねばならず、結局言わぬまま、市役所の決めたことに従うばかりで泣き寝入りすることになる。

④さらに、県庁・市役所を頂点としたばかりではないものが、ここに忍び込んでくる。あるいはそもそも村社会の県庁、市役所の方針自体も以下のような構造が底流にあるのかも知れない。つまり、目上のものの恥をあばかないように・恥をかかせないように・・ということが倫理となってしまい、それに外れるものは糾弾される(自分自身が窮屈に従ってきた倫理だから他の人の自由が許せない、とかで)。本来、上のものでも理不尽であったり間違っていれば正したり、わからない部分については聞くべきだと思われるが、それで立腹してきた上のものに逆らえない、という長年のありようが、いつしか逆らわないことを倫理にさえしてしまった(ちょっとしたストックホルム症候群のようなものとして)。また、とりわけ自然相手の第1次産業中心の村で在る場合、自然のリズムに応じた作業ができることがまず大切で、変わったことをやるのは余分で在る分、悪、とされやすいというのもあり。そして、この慣習的な倫理のほうが、一般の法より上になってしまい、その分、ますます第3者的な公共の組織からの介入の力を弱めてしまった(今回の事件で、保見氏は警察に相談に行ったと言うが、そこで、このような脆弱性がはたらいていなかったかどうか、というのが疑問に残ります)。

以上、山口でしばらく働いてみた経験・人から相談を受けた経験から、どうも上の人間が具体的指示を下さず、責任をとろうとしないようになっている職場が多いように思ったことからも考えたことです。少し前、県内の学校で、部活の指導を生徒同士に任せたままそれが暴力へと発展しても顧問はそれをそのままにしていた、というような事件があったように思えますが、これもそういう構造でしょう。繰り返しとなりますが、やはり、県庁、市役所、公共の組織は、法的に責任を任された部分はきちんと自分たち自身で行なう、住民に任せすぎない、のが大切と思います。住民も役所仕事を肩代わりさせられていることに責任を押し付けられているのかもしれない、とも考えてみるべきでしょう。絆と言っても他者を不自由とする「絆」になってしまっていないか住民も考えるべきで、また、何か、端的に法的にすむ事柄であれば法ですませることも大切でしょう。自治については心情でなく、互いに論理的に語り合うことも必要でしょう。理不尽な事柄がだれかに押し付けられないためにも。

再び山口県人さん、
コメントありがとうございます。適切な責任を追っていないトップに対し、下が逆らうことができないという現象は、日本全体で頻繁に起こっている問題で、山口県にだけ特別なものではないのかなと、個人的には感じています。
また、県庁や市役所は公共の組織とは言え、万能ではありませんし、過度な介入は自由な経済活動を阻害します。今回の事件について、県庁や警察の責任を問うのは難しいでしょう。ただし、このように孤立したコミュニティーを作らないために、いろんな第三者が関わる余地はあると思いますので、行政にもそれをサポートする役割を期待したいところです。

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プロフィール

suhobei

Author:suhobei
関東・関西で育ったものの、高校のころから両親の実家がある山口県に興味を持つようになり、2008年3月大学卒業をきっかけに山口県にIターン。他県出身者にしか分からない山口県の魅力、移住して良かったこと・苦労したことなどを中心に、山口県の話題を発信していきます!

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